Project Description
オープンコミュニケーションで、創業167年の知見を守る
安政4年創業の広川グループは、「食品」「エネルギー」「住宅設備」「保険」「旅行」など、幅広い分野で、地域の人々の生活を支えてきた。地元顧客やパートナー、メーカーとの連携を大切にしてきた企業にとって、「情報」は蓄積すべき大切な資産。一人一人の社員が持つ「情報」を集積していくツールとしてのSlackを導入に、リバネスナレッジはどう寄り添ったのか。リバネスナレッジの「Slack導入支援サービス」事例第一号となった広川株式会社 常務取締役 廣川充明氏に伺った。
「情報と知見」を会社の財産にしたい
―Slack導入を検討されたきっかけを教えてください。
広川株式会社 廣川 充明氏(以下、廣川) もともと弊社ではセールスフォース(以下 Salesforce)を導入しており、Slackの存在は知っていました。DX化の必要性も認識しており、今後、社内情報をSalesforceに集約していく上で、シナジー効果を最大限発揮できる社内コミュニケーションツールはSlackだという認識もありました。
ただ、導入にはハードルもありました。人的・時間的な意味での導入コスト面もそうですし、導入後ちゃんと使いこなせるのかどうか。また、社内コミュニケーションツールとして利用してきた別のツールから、社員がスムーズに移行することができるのか、データ移動も順調に運ぶかなど、さまざまな懸念事項がありました。
広川株式会社 常務取締役 廣川 充明 氏
―それでもSlack導入の可能性を探っていらしたと。
廣川 Slackアプリ自体の秀逸さは理解していたからです。膨大で雑多な情報がきちんと整理・蓄積されることに加え、検索力も高い。チャネルもきれいで、ファイルのプレビューもしっかり見られる。特にSlackの持つロジカルシンキング的な構造やシステムが個人的には好きでした。
―「ロジカルシンキング的な構造やシステム」について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
廣川 弊社に限らず、日本人のコミュニケーションは、会話や議論がその場の雰囲気で流されがちです。何となくいつものメンバーが集まり、ふわりとした課題感でミーティングを行い、しかし後から振り返ると、結局「誰が、いつ、誰と、何を、どこまで進めるか」が曖昧だった、という具合です。
また、弊社は卸売業や中間流通がメインなので、ルート営業が多いんです。昔からのお付き合いをしている取引先も多く、いわゆる「顧客とどれだけ親密な信頼関係を築けるか」が売り上げに直結します。
そうなると、どうしても社員個人の資質やスキルによるところが大きく、結果的に、限られた社員がその地域のキーパーソンを把握していたり、相手企業の内情を熟知していたりといった状況になりがちです。
ただ問題は、その社員が担当を外れたり、会社を去ったりした場合、その人が持っていた「情報や知見」ももろともに散逸してしまうということです。例えば「10年前まで取引があったあの会社となぜ疎遠になったのか、いまや誰も知らない」ことが起こり得る。
それ以外にも、それぞれの部門が、各部署のフォーマットや入力ルールで資料を作成しており、情報共有や引継ぎがうまくいないケースも散見されていました。そうした課題を一挙に解決してくれる存在が、Slackだったんです。
「何のために導入するか」、世界観のヒアリングからスタート
―Slack導入に逡巡もあった中でリバネスナレッジと出会ったということでしょうか。
廣川 そうです。2023年にSalesforce主催のイベント「Dreamforce(ドリームフォース)」に参加し、そこでリバネスナレッジの代表の吉田さんと取締役の平塚さんに出会いました。
それまでの私は、個人的にはSalesforceのコンセプトや理念には共感しつつも、最終的には「組織文化となじむか」が最大のポイントだと感じていました。
でも、吉田さんの言葉で考えが変わったんです。彼は言いました。「会社の情報資産は、個人がため込むものではなく、会社が蓄積するべきものだ」と。「会社とはチーム運営であり、そこに賛同できないなら、業務委託でもいいはずですよね」という発言は、本当にその通りだなと。
この言葉に背中を押され、数年後に迎える創業170周年の節目までに社内文化と情報蓄積の在り方を刷新したいと考え、Slack導入を決めました。
―リバネスナレッジに対して「ピンときた」といった感じですね。
廣川 何かを一緒に進めていく相手って、結局「共感できるかどうか」がポイントだと思います。吉田さんの言葉や、がっしりと握手してくれた平塚さんの手が、「この人たちと一緒なら、成し遂げられる」と感じさせてくれたんです。
―実際にSlack導入に際して、リバネスナレッジからどのような提案がありましたか。
廣川 まずは契約前に、「ゴール地点」を決める話し合いがありました。現状課題をヒアリングして、Slack導入後にどんな結果を得たいか、会社として「どんな世界観をもちたいか」を丁寧に聞き取り、言語化していってくれたんです。この作業はおそらく自分たちだけでは難しかったと思います。
―ちなみに御社が目指された「世界観」とはどういうものですか。
廣川「オープンなコミュニケーションを目指そう」というものです。
―裏を返すと、それまではあまり「オープン」ではなかった?
廣川 コミュニケーションはそれなりにありましたが、それでも「失敗」は隠すべきものだし、なるべく怒られたくない心理も働きます。会社からの発信情報も、社員全員が見たのか見ないのか、リアクションが曖昧でした。
「クローズドなコミュニケーション」が多いのも気になっていました。担当者同士は個々にコミュニケーションをとっていましたが、それがオープンな情報として会社全体で共有されていないという状況でした。
―導入に際しては、リバネスと御社の担当チームが一緒に作業を進めていったのでしょうか。
廣川 ええ、Slack導入担当チームには、なるべく社内文化に染まっておらず、構造的に物事を考えられる人材を集めました。その結果、Slack導入担当窓口は、中途採用、かつSalesforceを使い始めて1年未満という社員になりました。
―システムに詳しい人選を、あえて避けたのですか。
廣川 SalesforceもSlackもノーコードですから、システムエンジニアでなくても構いません。むしろゴリゴリのシステムエンジニアより、ニュートラルに物事を捉らえられる人選を重視しました。
―導入後、社内でのアレルギー反応はありましたか。
廣川 ある程度は出ましたが、あくまで想定範囲内でした。リバネスナレッジさんと一緒に、あらかじめ想定質問やクレームを洗い出し、対応策を事前に整えていたおかげです。同時に、Slack導入後は、そのシステムを最も使い倒してもらいたいバックオフィス(総務や経理、人事)を中心に、最初から巻き込む戦略も立てました。
―どのようにして巻き込んだのですか?
廣川 「Slackを使うことで、あなたたちの仕事はこれだけ楽になりますよ」というメリットを具体的に伝えたんです。総務や経理業務は、日々、定型業務と定型質問に忙殺されます。「この資料はどこにありますか」「この申請はどうしたらいいですか」という質問に、電話やメールで応え続けないといけません。それがSlackを使えば、軽減することを理解してもらいました。例えば、各種申請書や稟議申請フォーマットも、Slackにリンクを貼れば一発で検索が可能です。わざわざ総務や経理に聞かなくても、社員が自分で簡単に検索することができる。
大切なのは、「新システム導入」は、決して仕事を増やすためのものではなく、仕事を楽にさせるためのものであることを、社内の共通意識として実感させることです。
「Slackは面白い」と積極的に活用する社員も増えてきたという
使い倒して、100年先の事業につなげる
―Slack導入から10カ月が経過した今、導入成果はいかがですか。
廣川 想定以上に良い使われ方をしています。実務上の利便性がアップしたのはもちろん、当初の「オープンなコミュニケーション」の目的でも、予想以上に活発化しています。こちらも、社員同士のコミュニケーション形成のために「趣味チャンネル」など、自由度高い使い方を推奨していました。今では「釣りチャンネル」や「猫チャンネル」「子育てチャンネル」などが活況です。これまで知り合うことのなかった社員同士の交流がSlack上で生まれ、「仕事でも何か一緒にやりたいよね」とアイデアが飛び交う。そんな場が実現しているのが嬉しいです。
―導入時に目指した「オープンなコミュニケーション」に向けて、順調に変化が現れていますね。
廣川 はい。とはいえ、一対一のDM(ダイレクトメッセージ)が社内コミュニケーション全体の7割を占めており、オープンなパブリックコメントは2割にとどまっているので、もっとオープンにしていきたいと思っています。DMとパブリックコメントの比率を逆転させることが目標です。
―今後、期待している「Slack効果」はありますか。
廣川 目先の話をすると、Slack導入以来、意識して資料や経緯など「ナレッジの蓄積」を進めているので、来年からこうした過去の資料を探すという業務の非効率が一気に解消されることです。弊社は、年に1回だけ開催されるイベントや半年に1回しか発生しない事務作業が比較的多いんですね。そのたびに「去年のファイルはどこにある?」「誰が担当者だった?」というやり取りをしていたのですが、Slack上で検索すればすぐに出てくるようになるので。
一方、長期的な話ですと、新たに「Slack AI」がリリースされましたよね。これまで何人も何十時間もかけてやってきた〝仕事〟は、仕事ではなくなると思います。今後、「デジタルネイティブ世代」の次に、「AI世代」と呼ばれる若者も入社してくるでしょう。こうした世代と一緒に、創造的な仕事を積み上げていけるのではないかと期待しています。
―最後に、ベタな質問になりますが、Slack導入を検討される他の企業の方に対して、リバネスナレッジの導入支援サービスを利用された感想を一言お願いします。
廣川 Slack導入自体はどの企業でもできますが、効果を最大限に発揮するには、具体的にゴールを設定し、そこに至るまでの道筋を明確に描く専門スタッフが必要です。もちろん自分たちだけで頑張る道もありますが、そこに膨大な時間と労力と人的コストが割かれてしまっては本末転倒です。まさに私が当初、Slack導入をためらったのもその理由からでした。Slack導入決定後、運用ルールを決めて、社員に定着させるまでのスキームを考え、あらかじめ失敗事例や要因を洗い出し、各部署を説得して……という作業は大変です。
その点、リバネスナレッジさんは、自社グループ全体で実際にSlack導入して、試行錯誤しながら最適解に導いてきた実績があります。実用に当たっての落とし穴やソリューションも熟知しているから、メンター兼パートナーとして、非常に心強い。顧客にカスタマイズした手順も示してくれます。
Slackは導入がゴールではありません。導入後に使い倒して、なんぼ。弊社は安政4年から続く長い業歴がありますが、私たちの願いは、この先も100年、200年と事業発展させていくことです。そのための手段として、Slack導入がスムーズに進んだことは幸運だったと思っています。
取材・記事:株式会社MANN
(MANNはリバネスグループの一員です)
広川株式会社
HP:https://www.hirokawa-kk.jp/
所在地:〒733-0002 広島市西区楠木町1-9-10第二弘億ビル3F
食品や石油エネルギー、住設エネルギーのほか、旅行事業や保険事業など、幅広い事業を展開し、地域の皆様の暮らしをエールしています。
担当者吉田丈治のコメント
安政四年(1857年)創業の広島の老舗企業が2024年にコミュニケーションプラットフォームの変更に伴い組織カルチャーを変革していくというチャレンジにリバネスナレッジの経験を提供できたことを誇りに思っています。
導入後の皆さんの活用度合いは目覚ましく、コミュニティへの発信まで行っていただける広島のリーダー組織へと進化していると感じました。
Slack AIを導入したことで、最先端の働き方ができる組織への成長が期待できます。IT基盤が整うことによって採用活動にもプラスの影響を与えられるのではないかというのが個人的に楽しみにしている点です。